高齢者と暮らし

1.高齢者を支える環境づくりを促進する要因

高齢者を支える環境づくりを促進する要因は、老年観の変化にあります。
最近では高齢者に対する型にはまったイメージが見直されてきています。
「老人はお払い箱だ」という考えを覆す高齢者が増えたのがひとつの理由といえるでしょう。
現に、高齢者になってもマラソンや伝統芸能などで活躍している人がいるように、
高齢者の可能性や活動も以前に比べ幅広くなりました。

アメリカのサンシティ(※)などが良い例ですが、
高齢者自身も自分の可能性を模索し、残りの人生を大いに楽しもうという考えを持つ人が増えました。
アメリカサンシティでの実際の暮らしのVTRを見たとき、
そこでは社会貢献をしたり、ダンスの練習に励んだりと、若者顔負けの元気さがとても印象的でした。
日本でもこのような老後の生き方が徐々に受け入れられてきているのではないかと感じます。

※アメリカのサンシティ

サンシティ

アメリカで生まれたリタイアメントコミュニティー。
リタイアメントコミュニティーはその名が示すように、
退職された方を居住者とする町で、
多くは55歳以上を居住の条件としています。
アクティブ・アダルト・コミュニティーとも呼ばれています。
自立して生活できる55歳以上の方の町です。
それぞれが生き生きと自分の趣味や暮らしを謳歌しています。

私は、父方の祖父と祖母と同居していたこともあり、高齢者との関わりが密にありました。
彼らも高齢者とよばれる年齢ですが、祖母は気の合う仲間と趣味の畑仕事を楽しみ、
祖父も祖父でとても多趣味で、盆栽や書道、町内のカラオケや行事の計画などに参加し、
なんとも楽しそうな毎日を送っていました。
(今は私も家庭を持って、家を出ましたが、実家に帰ると今でも元気です)

また、母方の祖父と祖母も村といわれる田舎に住んでいたのですが、
自給自足生活や、近隣の人とのおしゃべりやカラオケなどで元気に楽しんでいました。

このように、高齢者が積極的に活動することや、
社会に貢献できる機会が整えられることにより、高齢者を支える環境づくりが促されていくのだと思います。

2.間違った社会的イメージからの脱却を促進する要因

間違った社会的イメージからの脱却を促進する要因には、私たちの意識の向上があげられると思います。
現在ではとくに若者の間で、高齢者に対するイメージや意識が大きく変わってきているのではないでしょうか。
以前に比べても、ホームヘルパーや介護士など社会福祉施設で働く若者も増えています。
それは高齢者への関心や意識が高まっているあらわれなのだと思います。
これにより、私たちと高齢者との関わりあいがより身近なものになり、
否定的、肯定的ステレオタイプが取り払われるきっかけになるのだと私は考えます。

さらに、個性の尊重がうたわれている現代では、他人を思いやる気持ち、尊敬する気持ちが重視されています。
ですので、高齢者に対しても間違った解釈をするのではなく、
理解をもってともに生きていく姿勢が強まってきているのではないかと思います。

3.社会システムの整備を促進する要因

社会システムの整備を促進する要因は、地域や政府、ないし家族の理解があげられると考えます。
現在では、高齢者にとって住みやすい生活環境を整えることを目的にした住宅、
施設建設が積極的におこなわれるようになっています。

在宅介護においても、高齢者が暮らしやすいよう、バリアフリーの階段や手すりを施すなどの試みがなされています。
また、施設だけではなく、心のケアに焦点をおいた社会システムが整えられつつあるのも事実です。

たとえば、定期的に高齢者の集いのようなものを開き、
コミュニケーションやレクリエーションをおこなうといった機会の提供などがそうです。

私の住む奈良市でもそのような試みが盛んです。
「市民だより」でよく目にするのですが、地元の公民館では、高齢者と若者の交流会、料理教室、俳句の勉強会、
家族でのハイキングなど、さまざまな催し物が開かれています。
こういった地域や政府ないし家族の理解は、高齢者の住みよい社会システムの整備を促進していると思います。


以上のように、高齢者にとって望ましい暮らしや問題点などを見てきましたが、
みなさんは、ご自身が60歳、70歳になったときの社会を想像したことはありますか?

私が最後に言いたいのは20年後の日本は、高齢者が残りの人生を大いに楽しみ、
いきいきと暮らせるような社会であってほしいということです。
子育てを終え、仕事を退職し、まだまだエネルギーが溢れている高齢者たちが、
活躍できる社会を、今から考えていきたいと思います。