福祉と情報

現在の福祉サービスにおける「情報」の役割

では、次に、情報の役割について考えてみたいと思います。
このような変遷をたどっていった福祉行政ですが、自治体主体の福祉政策がとられたことにより、
住民がどのような福祉サービスを必要としているのかという福祉サービスのニーズを把握することから、
住民に福祉サービスを実際に提供するまでの一連のプロセスの中で、
「情報ネットワーク」の位置づけは重要なものとなっていきました。

■ 生活支援ネットワーク

住民一人一人が抱えるさまざまな問題にすぐに対応して、
問題解決を図るための援助・サービスや、福祉を提供する人
(ケアマネージャーや、地域のボランティアなど)や、
自治体の打ち出す福祉政策に関する福祉情報などを収集し、
またその情報を整理して提供する。


この一連の行動を幅広く、かつ迅速に行う関係機関や団体の間のネットワークが強固なものであればあるほど、
住民に対して質の高い福祉サービスを提供することができます。

たとえば、地域性のある情報をデータベース化してそれを保存、更新し、検索することのできる状態にしておけば、
高齢者の生きがいや生活の質を高めるなど「参加型の生活支援ネットワーク」を
地域に根づいたかたちでつくり出すことができます。

■ 介護支援

また、介護の問題を考えても、現状では介護者や家族の支援も重要であり、
インターネットが情報交換や相互理解の場になると同時に、実際の生活における援助につながる活動が展開できます。

ここからは私の友人の話になるのですが、
私の友人のお父様は、高次脳障害と闘っておられ、彼女も、彼女の家族もお父様の介護をしています。
今はずいぶんよくなって、今、なお残っているのは記憶障害だけとのことですが、
はじめは、脳障害を負ってしまったお父様をどう介護していけばいいのかわからなかったと話していました。
また、介護保険についての知識もなく、本屋に並んでいる本を読んでも、
介護保険については難しくてよくわからなかったし、高次脳障害は、「見た目」は普通の人と本当に何のかわりもないので、
介護をする側もすごく苦労するし、障害自体もなかなか理解されにくいにもかかわらず、
そのうえ情報は本当に少なく大変だったといいます。

ですが、インターネットで検索して調べてみると、彼女のお父様の症状に似た事例の障害者の方を介護している人が
情報提供をしていたり、その介護をしている人たちのコミュニティーがつくられていて、
さらにそのコミュニティーの中で情報交換ができたりしたそうです。

それだけではなく、当初は、ある程度まで症状が回復したら自宅近くのリハビリ施設に通所される予定でしたが、
市役所の保険課の方がお父様の様子を見て、お父様に本当にあうリハビリを考えて調べてくださり、
県外の総合リハビリテーションセンターという、
高次脳障害に関してかなり進んでいる施設をすすめてくださったと聞いています。

この一連のことも、「情報ネットワーク」がなければできなかったことだと思います。
まさに、情報ネットワーク現代の福祉活動を支える大きな柱の一つとなっているんですね。