「情報アクセシビリティ」についての私のアイデア
■ 誰でも平等に情報を得ること
「情報アクセシビリティ」を考えるときに、まず思いつくのは、実際のホームページの構成だと思います。
たとえば、高齢者の方がよく利用するようなページでは、文字を大きくして高齢者の方にも見やすいページにするとか、
小学生などがよく見るページには難しい漢字は使わないだとか、
目の不自由な方のつかう読み上げソフトが、ちゃんと文字を読み上げてくれるようなページの構成をするとか、
色盲の方でもちゃんと識別できるようなカラー配置にするなど、
ちょっとHTMLを書き換えればすぐ実現することのできるものばかりです。
今、各企業が独自の基準を設けて、誰でも平等に情報が得ることができるようなページ制作をしています。
このように、情報アクセシビリティを確保するためのさまざまな施策がとられていますが、
実際にパソコンを使ってそのページを見ることができなかったら意味がありません。
現在の日本の現状として、やはり、障害者がちゃんと職につくことは難しく、
収入も健常者でちゃんと職についている人より少ない人が多いということがあります。
今ではずいぶん価格も安価になってきていますが、決して手軽に手に入るとはいい難いパソコン。
障害者の方が容易に買うことのできるものとは言い切れません。
だから、ソフト面はどんどん充実していくのに、パソコンをもつことのできる人は限られてしまい、
そこで大きな情報格差が生まれてしまいます。
■ 私の提案 ーユニバーサル・インターネットカフェー
そこで、私が考えたのは、「ユニバーサル・インターネットカフェ」というものです。
各地方自治体がインターネットカフェをつくり、それを障害者や高齢者の方へ開放し、
パソコンを自由に使えるようにするというものです。
クーポンを配布
障害者や高齢者の方に、毎月ユニバーサル・インターネットカフェの無料クーポンを10枚配布し、
自分が好きなときにインターネットカフェに行って、ネットサーフィンをしたりできるようにします。
こうすることによって、情報弱者といわれている障害者や高齢者に、実際にパソコンに触れる、
という機会を与え、情報を得ることのできる状況を作ります。
また、無料クーポンを持っていない健常者でも、普通にインターネットカフェに行くよりも
安い値段でインターネットができるというようにし、
そこで得た収入はまた、このインターネットカフェの運営費へとまわします。
(このようにして得た収入以外では、自治体の予算の中からカバーして運営)
ポイント02
サービスの絞り込み
また、通常のインターネットカフェでは、飲み物が飲み放題だったりするのですが、
この地方自治体経営のインターネットカフェでは、そういったサービスはなくし、
純粋にパソコンを使う場とします。
「パソコンを使う」ということをメインに考えて、
ドリンクなどのパソコンを使うということ以外のサービスはなるべくカットしていって、コストダウンをはかります。
このようにしていけば、無駄なく経営ができるのではないかと思います。
このようにして得た収入以外でかかるコストは、自治体の予算の中からカバーしていきます。
それをNPOが作るのであれば、このインターネットカフェのための募金を募って、
それを資金源とするのもいいかもしれません。
ポイント03
相談員を配置
また、このインターネットカフェには、パソコンについての相談員のような人を常駐させておき、
困ったことがあったらなんでも相談できるようにします。
とくに、パソコンは初めて触るというようなお年寄りに対しても、この相談員を常駐させることによって、
パソコンを起動させるところから文字の打ち方、インターネットの接続の仕方などを
しっかりとバックアップしていくことができるのではないかと思います。
ポイント04
重度の障がい者のための仕様
また、重度の障害者のための点字ディスプレイや呼気スイッチ、
視線入力用のソフトウエア・キーボードなどもパソコンに搭載したりできれば良いなと考えます。
パソコン自体に標準装備されていなくとも、これらの特殊な出入力手段を用意することができるのであれば、
インターネットカフェで無料貸し出しをするようにしたりして
(イメージ的には図書館の本を借りるようなシステム)住民一人一人が差別されることなく、
インターネットを利用して情報を得ることができるようにバックアップしていけるはずです。
つまり、インターネットカフェとしての利用だけでなく、
障害を持つ人が、インターネットを円滑に利用するための手助けとしての施設をつくるのです。
ポイント05
アクセスしやすい立地・利用しやすい店舗
このインターネットカフェの立地を、
市役所や福祉施設・機関の近くに建てるか、それらの機関の中に作ります。
なぜかというと、市役所や福祉施設は高齢者や障がい者も利用すると思うので、
そこにつくれば手軽に利用できると思うからです。
というのも、普通のインターネットカフェは、ちょっと奥地にあったり、
繁華街のど真ん中にあったりすることが多く、情報弱者と呼ばれる人が利用しにくい環境にあります。
また、カフェ店内に入るためには階段を登らなくてはならないところも多く、
「インターネットカフェに入るまで」も障害者には難所続きです。
また、いざインターネットカフェに入っても
インターネットカフェには、パソコンがたくさん並べられているため通路は狭く、
パソコンデスク一つ一つも狭くて、車椅子の人が通れないとか、デスクにしっかりつけないという問題もあります。
動物は問答無用で入店禁止なので、盲導犬や介助犬が入ることもできません。
また、店内に入っても点字ブロックなどはあるわけもなく、車椅子の人や全盲の人には利用するのが難しいものがあります。
そこで、この地方自治体管理のインターネットカフェは、
入るまではスロープをしっかり整備し、広々とした通路を確保します。
店内の段差は全てなくし、全盲の人がつかえるような、
読み上げ機能を搭載しているパソコンまでは点字ブロックで案内します。
もし2階建てとかにするのであっても、広々としたエレベーターを完備し、
車椅子の人にも利用のしやすい机の高さで統一する。
こういう風に、利用しやすい環境を隅々まで整えていくことによって、
市役所や福祉施設に用事があって足を運んだついでに、
「ちょっとパソコンをさわって帰ろうかな」という、本当に気軽に、楽しく利用できるようにします。
そうすることによって、インターネットを使って情報を得る、ということに関しては
すべての人がフラットな状況に立つことができるのではないかと思います。
そしてさらに、先述したインターネットのページ構成も、
すべての人がちゃんと情報を得ることができるように考えて制作すれば、
情報弱者といわれる方も、同じ量の情報を得ることができると思います。
まとめ
情報化社会といわれている現代。「福祉」と「情報」という、一見して全く違う領域のものですが、
この2つが結びつくことによって、私たちに、よりよい福祉サービスが提供されます。
私の友人のお父様の例のように、「どのように介護をしたらいいのか?」という家族側の疑問や、
「どの病院に入れたらお父様にとって一番いいリハビリを提供してくれるのか?」ということは、
情報ネットワークがしっかりしてないとわからなかったことだと思います。
よりよい福祉サービスの提供のためには、情報ネットワーク作りはなくてはならないものだと思います。
そして、一つ情報というものをとってみても、全ての人が平等に情報を受け取るための取り組みが重要です。
私が今回提案した「ユニバーサル・インターネットカフェ」は、
いくらホームページを全ての人に優しいページ構成にしたとしても、情報を受け取るための第一歩である、
パソコンというツールを全ての人が扱えるようにならないと意味がないな、という考えから生まれました。
このユニバーサル・インターネットカフェの実現に向けては、予算など様々な問題が出てくると思いますが、
これから先、情報化はますます進み、情報格差はさらに広がっていく懸念がある今、
ソフトの面でも、ハードの面でも、優しい環境作りをすることが重要だと思います。
また、福祉サービスの需要もさらに多様化していくと思います。
今以上に地域の行政機関や福祉施設などの情報ネットワークの整備をすることも重要課題の一つだと思います。
そして、福祉サービスの需要に合ったものを提供して、サービスを受ける側が少しでも自立して生活していくために、
私たち一人一人ができることから、はじめてみることが大切なのではないかなぁ、と思いました。